夏を送るサイダーと俺 第一章② 孫
どうも皆さんこんにちは!かものかもです!今回は「夏を送るサイダーと俺(仮)」
の第一章の二話目です。肩と首がいてぇ…。それではどうぞ!
夏を送るサイダーと俺
第一章
孫
「ひとりで行けるって、そんなこと言いながらどっか行く気だろ。」
どうやら図星だったようで、老婆はうつむく。
「だって…。」
年齢にはそぐわない言葉だ。でも、言いたいことは分かる。この老婆が初めてじゃない。これまでに2人の中年男性と、1人のおばさんを送った。
そう、俺の仕事は死んだ人が転生するまでの面倒見と見送りだ。死んだ人たちは、電車に乗って次の人生へと向かっていく。
「さぁ、ばぁさん。散歩がてら、行くぞ。」
店を出て、老婆の横に立つ。さっきまでは座っていたからわからなかったが、老婆は腰が曲がっていてとても小さく見えた。おまけにやせ細っていて小学生ぐらいの大きさだった。
やがて、重い足を引きずるように老婆が歩き出した。少し心の準備ができたところなのだろう。
「駅に行くまでの間さぁ、ばぁさんのこと聞かせてくれよ。」
乱暴にしないとやってらんない。でも、こういう寂しそうな人たちを見るとそれができなくなる。だから老婆の最初の態度が一番ありがたかった。
「あたしにはな、孫が一人いたんよ…。」
「あぁ、さっき言ってたな。」
この老婆もこれまでに自分が送ったやつらと同じだ。しんみり語って、最後には無理やり笑って電車に乗っていく。このままじゃ俺、死ぬかもな。
「そんでな、ものすっごいべっぴんさんなのよ。年は…あんたと同じくらいだったけな。とにかくきれいなんよ。
でもずっとカリカリしておった。あんたみたいにな。」
「それはどうも。」
「別にほめとらんよ」
「いや、冗談だから。…。そうか、で?その孫とはどうだったんだ?」
「いや、それが…。」
これも毎回同じパターンだ。ここで悲しい話になる。まじでこの役誰かに変わってほしいんだが。でも、今回は少し違った。
「それが、どうしたんだよ?」
「1年くらい会ってなかったんよ…。だから、孫がお嫁に行けてるか心配で心配で…。」
「へぇ…意外と優しいばぁさんなんだな。」
これは心から思ったことだった。死んでも孫のこと気にするなんて相当なものだ。
話しているうちに駅はすぐそこまで来ていた。
「最後になるけど、ばぁさん、自分の名前覚えてる?」
「えぇっと…….。何だったけな?」
「やっぱり覚えてないよな。」
正確には「わからない」だ。この世界には、「名前」というものが存在しない。
「もう電車来てるな。最後にタバコ吸うか?」
「いらん。もし、もし孫がここに来たら伝えておいくれ。『助かった』と。」
「りょーかい。じゃぁな。」
老婆は電車に運ばれていった。
「孫がどんな人かわからないんだけどなぁ。」
いかがだったでしょうか?まだ第一章なのに疲れたぁ…。次は3話でお会いしましょう!